喫茶室
メイントピック
作成者
土谷 重幸/開発統括・改革担当/制作本部
作成日
2002/05/13 Mon 07:57
編集日
2002/05/13 Mon 09:05
掲載期限
期限なし
文書タイトル
カオスの縁
■カテゴリ:
AB-物理のわき道
■メッセージ内容:
最近読んだ本の中に、「カオスの縁」という言葉が出てきた。
この言葉が広まることになったのは、1988年のノーマン・パッカードという
人の「カオスの縁への適応」という論文名からだとされる。
このころ、スチュアート・カウフマンという人のブール式ネットワークの
研究から同じ概念に到達していたが、このパッカードの論文により、複雑系の
研究の中にカオスの縁という概念が広がり、1970年代のカオス研究が
さらに大きく花開くきっかけにもなったと言えそうだ。
この時期、スティーブン・ウォルフラムという人のセル・オートマトンの研究に
刺激を受けたクリストファー・ラングトンによるλパラメータの導入により
カオス現象がコンピュータに応用できる可能性がはっきりと示され、
この「カオスの縁」領域で、計算能力が最大になることが示された。
情報システムの機能を、情報の蓄積、情報の伝達、情報の変換、の3つに
大別すると、蓄積は秩序のある領域が適し、他の二つはカオス状態が
適している。この3つがほどよく混合した「カオスの縁」領域で、もっとも
高い性能の情報処理システムが生まると考えられてるそうだ。
人間の組織でも言えるのかも知れないと考えた。情報の蓄積や整理が得意な人、
雑な性格だが直観力に優れる人、蓄積された情報を解析・分析するのが得意な人、
いろんな人たちが混然となった組織が、最も活気があって、新しいものを
生み出すエネルギーに満ち溢れている。そんなことをイメージした。
昨晩(12日)のNHKスペシャルで、21世紀型の組織について、アメリカの
軍隊や企業や研究所が取り組んでいる様子が紹介された。組織ピラミッドを全く
逆転させる組織を発表したフォード、戦場の末端の兵士にリアルタイムの戦況を
伝え、現場で判断し行動することを求める陸軍のシステム、フォーラムという
概念を、活性化した研究者交流の場として利用し成功している企業。こうした
取り組みとカオスの縁の概念が、番組を見ながら、頭の中で交錯していた。
われわれは、情報を便利に取り扱う道具やネットワークを手にしているが、
それらを利用した最適な組織運営をまだ模索してる。それを解く鍵は、
このカオスの縁にある、そう感じたこの数日間だった。
ロゲンスルト